研究課題/領域番号 |
10440199
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井上 秀成 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60051752)
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研究分担者 |
吉岡 直樹 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (30222392)
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キーワード | 癌細胞 / 光化学治療 / 光増感色素 / 金属クロロフィル / DNA / クロロフィル誘導体 / クロリン / アニオン性クロロフィル |
研究概要 |
癌の光化学治療用の光増感色素として有望視されているクロロフィル誘導体の一つであるクロリンe_6及びその金属錯体に着目し、それらのDNAとの相互作用を検討した。まず、クロリン系増感色素の両親媒性を改良する目的で、親水性を付与するためにクロリンe_6の3個のカルボキシル基をナトリウム塩とし、より強いπ-πあるいはd-π疎水性相互作用を発現させるために中心金属(亜鉛(II)あるいは銅(II))を導入した。これらアニオン性クロロフィル誘導体(例えば、chlorin e_6、zinc(II)chlorin e_6、copper(II) chlorin e_6などのナトリウム塩)の分光学的性質をNMR、紫外・可視吸収スペクトル、円偏光二色性(CD)スペクトル、蛍光スペクトルなどにより調べた。ここで調製したアニオン性クロロフィル誘導体及びその金属錯体と子牛胸腺DNA(CT-DNA)との相互作用を紫外・可視吸収スペクトル、CDスペクトルおよびDNAの熱変成温度(T_m)の変化により調べた。その結果、一連のアニオン性クロロフィル誘導体は全てCT-DNAの添加に伴って吸収スペクトルに減色効果を示し、CT-DNAへの集積能を有することが示唆された。また、亜鉛(II)クロリンe_6(9.09×10^4M^<-1>)あるいは銅(II)クロリンe_6(6.71×10^4M^<-1>)の相互作用の結合定数は、中心金属をもたないクロリンe_6(2.58×10^4M^<-1>)のそれよりも大きいことが分かった。以上より、合成したアニオン性クロロフィル誘導体及びその金属錯体とDNAとの相互作用は中心金属種やマクロ環構造の影響を受けやすい静電的な結合であり、従来のカチオン性ポルフィリン誘導体とは異なる様式であることが判明した。
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