光誘起による光・スピン多重機能性金属錯体の開発

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10440203
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 小島 憲道 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60149656)
• 研究分担者: 小松 徳太郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (50280938) ; 松下 信之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (80219427)
• キーワード: スピンクロスオーバー / 混合原子価 / 多重機能性 / 低スピン・高スピン転移 / 原子価転移 / ソリトン / 光誘起

研究概要

配位子場がスピンクロスオーバー領域にある非対称配位子を架橋とした混合原子価錯体は、電荷移動転移とスピンクロスオーバー転移が連動した得意な相転移を起こす可能性を持っている。本研究では、非対称配位子 dto(=C_2O_2S_2)を架橋とする Fe 混合原子価錯体[(n-Pr)_4N][Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]を合成し磁気特性を調べた。その結果、[(n-Pr)_4N][Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]は、6K以下で自発磁化が現われること、磁化率の温度変化から磁気相互作用が強磁性的であることから、Tc=6Kの強磁性体であることがわかった。また、ESR 及び^<57>Fe メスバウアースぺクトルの解析の結果、[(n-Pr)_4N][Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]は、室温から温度を下げて行くと、120K で Fe^<II>→Fe^<III>への電荷移動転移を起こし、Fe^<II>,Fe^<III> のスピン状態がFe^<II>(S=2),Fe^<III>(S=1/2)からFe^<II>(S=0),Fe^<III>(S=5/2)に変化することがわかった。120K以下では、Fe^<II>スピン状態がS=0であることから、Tc=6Kの強磁性発現にはFe^<II>→ Fe^<III>間電荷移動相互作用が重要な役割を演じているものと思われる。
また、Au混合原子価錯体Cs_2[Au^IBr_2][Au^<III>Br_4]においては、Au^I-Au^<III>間電荷移動遷移に対応する光照射により混合原子価状態(Au^<I,III>)から単一原子価状態(Au^<II>)への光誘起相転移をラマン分光法により発見した。

研究成果

• [文献書誌] Y.Murakami,N.Kojima,et al.: "Control of Tc and Spin Bistability in the Spin-Crossover System. [Fe(4-NH_2trz)_3 ](R-SO_3)_2"Syntetic Metals. 103. 2157-2158 (1999)
• [文献書誌] N.Kojima,Y.Murakami,et al.: "EXAFS Study on the Spin-Crossover System, [Fe(4-NH_2trz)_3 ](R-SO_3)_2"Syntetic Metals. 103. 2154-2154 (1999)
• [文献書誌] X.Liu,N.Kojima,et al.: "Electronic Structure of the Gold Complexes Cs_2Au_2X_6(X=I, Br, and Cl)"Physical Review. B59. 7925-7930 (1999)
• [文献書誌] X.Liu,N.Kojima,et al.: "Pressure Induced Phase Transition in Mixed-Valence Gold Complexes Cs_2Au_2X_6(X=Cl and Br)."J.Chemical Physics. 110. 9174-9178 (1999)
• [文献書誌] T.Komatsu,N.Kojima,et al.: "A weakly Coupled Molecular Spin-Ladder (BEDT-TTF)Zn(SCN)_3"Synthetic Metals. 103. 1923-1024 (1999)
• [文献書誌] X.Liu,N.Kojima,et al.: "Photoinduced Phase Transition in a Mixed-valence Gold Complex"Physical Review. B61. 20-23 (2000)
• [文献書誌] S.Sugino,N.Kojima: "Magneto Optics"Springer. 334 (2000)