研究概要 |
Fe(II)イオンがトリアゾールによって架橋された一次元鎖の構造を持つ錯体は、室温付近に大きなヒステリシスを伴ったスピンクロスオーバー挙動を示す。本研究ではスピン転移温度およびヒステリシス温度領域を制御する目的として多種多様なスルホン酸イオンを対イオンとした[Fe(NH_2-trz)_3]錯体を合成し、系統的にスピンクロスオーバー転移の挙動を調べた。対イオンがアルカンスルホン酸イオンについては、アルキル鎖長が長くなるにつれて転移温度が上昇し、n=6以上では転移温度が飽和する傾向がみられること(分子ファスナー効果)、転移温度のヒステリシス幅とアルカンスルホン酸イオン(C_nH_<2n+1>SO^-_3)の炭素数との間に相関関係(even-odd effect)があることを見出した。非対称配位子dto(=C_2O_2S_2)を架橋とするFe混合原子価錯体[(n-Pr)_4N][Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]においては、Tc=6Kの強磁性体であること、120KでFe^<II>→Fe^<III>への電荷移動転移を起こし、Fe^<II>,Fe^<III>のスピン状態がFe^<II>(S=2),Fe^<III>(S=1/2)からFe^<II>(S=0),Fe^<III>(S=5/2)に変化すること見出した。 また、Au混合原子価錯体Cs_2[Au^IBr_2][Au^<III>Br_4]においては、Au^I-Au^<III>間電荷移動遷移に対応する光照射により混合原子価状態(Au^<I,III>)から単一原子価状態(Au^<II>)への光誘起相転移をラマン分光法により発見した。
|