研究概要 |
金属的伝導性を示す1:1組成の塩(TTM-TTP)I_3について静磁化率の再測定、選択的に^<13>C置換されたドナーを用いた^<13>C-NMRの測定などを行ない、この塩の絶縁相は最初に期待されたような常磁性絶縁相ではなく、基本的に非磁性の絶縁体と考える方がよいという結論に達した。このように絶縁化の原因は電子相関ではなく、むしろ格子変調の影響が致命的である。また新たに2種類の金属的な1:1塩(TTM-TTP)[C(CN)_3],(TTM-TTP)FeCl_2Br_2と、5種類の半導体的1:1塩(TTM-TTP)AuI_2、(TTM-TTP)AuBr_2、(TTM-TTP)HgI_3(TCE)、(TTM-TTP)FeCl_4、(TTM-TTP)FeBr_4を発見した。これらの塩では、ユニフォームなカラムをもつものは、少なくとも室温では金属であるが、すべて一次元性の非常に強い物質であるため、電荷密度波などに対して不安定で低温で絶縁化する。さらに(DTM-TTP)(TCNQ)(TCE)、(TMET-TTP)_2(TCNQ)などのTTP系伝導体のESRの測定を行い、g値の温度依存性から磁化率をドナーとTCNQの寄与に分離することによって、一次元性の強い前者のような錯体は非磁性絶縁相をとり、二次元性の強い後者は常磁性絶縁相になることを明らかにした。このことを発展させてBEDT-TTF系のような二次元伝導体が非磁性絶縁体になるのは結晶の対称性が低く局在した電子がペアーをつくる場合のみであるという一般則を導いた。今後1:1組成でユニフォームな二次元構造をもつ系が開発できれば興味ある物性を示すことが期待できる。
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