研究概要 |
(1) 5員環アミンの塩である(C_4H_8NH_2)ClO_4と(C_4H_8NH_2)PF_6について,^1H,^2H,^<19>F,^<31>Pおよび^<35>Clの核磁気共鳴(NMR)と熱分析(DTA,DSC),粉末法X線回折の実験を行い,固相-固相相転移と各固相における陽イオンの運動についての知見を得た。(C_4H_8NH_2)ClO_4においては250,306,310,342Kに固相-固相相転移が,(C_4H_8NH_2)PF_6においては244と282Kに固相-固相相転移が見出された。両塩の最高温固相の構造はCsClタイプの立方晶であることが分かった。低温側の固相では陽イオンは主にパッカリング運動を,最高温固相においては等方的回転運動に加え自己拡散運動を行っていることを明らかにした。結果はBulltin of the Chemical Society of Japan(1999)に発表した。 (2) 6員環アミンに分類されるモルフォリンとクロラニル酸(C_4H_8NH_2O)(C_6HCl_2O_4)の塩を合成し,室温での結晶構造を単結晶X線回折実験より決定し,モルフォリニウムイオンのコンフォメーションと結晶中の水素結合についての知見を得た。結晶中ではクロラニル酸のみでO_…H_…O型の一次元水素結合鎖をつくりモルフォリニウムイオンはこの鎖をN-H_…O型の水素結合で結んでいることを明らかにした。結果はActa Crystallographica C(1999)に発表した。 (3) 5員環アミンの塩である(C_4H_8NH_2)_2MCl_6 (M=Sn,Te,Pt)について,^1H NMR,^<35>Cl核四極共鳴(NQR),単結晶X線回折,熱分析(DTA,DSC)および分子軌道法による計算を行い,室温における結晶構造の決定し,結晶中におけるピロリジニウムイオンの運動ならびにコンフォメーション,固相-固相相転移の機構についての知見を得た。ピロリジニウムイオンのコンフォメーションはシクロペンタンと異なりC2型が安定であり,Cs型は鞍点になることを明らかにした。結果の一部はJournal of Molecular Structure(2000,印刷中)に発表した。
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