研究概要 |
ヘリシティーを有する1,12-dimethylbenzo[c]phenanthrene-5,8-dicarboxylic acid(HDC)をゲスト分子に、ホスト分子には未修飾CDxであるα-、β-およびγ-CDx、および修飾CDxであるheptakis(2,6-di-O-methyl)-β-CDx(DMe-β-CDx)およびTMe-β-CDxを用いて、水中におけるねじれた構造を有する分子の不斉認識系の構築および詳しい不斉認識機構について、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、NMRおよび紫外可視吸収スペクトルにより検討した。(M)-HDC-β-CDx錯体の結合定数はl8700±1700M^<-1>、(P)-HDC-β-CDx錯体の結合定数は2200±100M^<-1>であった。β-CDxによるHDCのエナンチオマー間のギブス自由エネルギー変化の差(ΔΔG)が5.2kJmol-1という非常に大きな値を示した。さらに、HDC-β-CDx錯体において(P)-HDCのpK_a(3.4)より(M)-HDCのpKa(3.1)が低いこと、(M)-HDC-β-CDx錯体は(P)-HDC-β-CDx錯体より16.0kJ mol^<-1>エンタルピー的に有利であること、CZE測定や^1H NMR測定からCDxの水酸基をO-メチル化したDMe-β-CDxおよびTMe-β-CDxとHDCは相互作用が弱いことなどが明らかとなった。さらに、可能な錯体構造を二次元のNMRスペクトル(ROESY)の詳細な測定から推定することができた。これらの結果を基に、キラルにねじれた構造をもつβ-CDxは、同様にねじれた構造を持つHDCの不斉を効果的に認識できるという結論を得た。
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