研究概要 |
トリスフェナントロリンRu錯体[Ru(phen)_3^<2+>]錯体の不斉認識をβ-シクロデキストリン(β-CD)の全ての第一級水酸基をチオグリコール酸で置換したper-CO_2H-β-CDをホスト分子として用いて検討した.解離形ホストのper-CO_2^--β-CDは0.067Mリン酸緩衝溶液中でゲストのΔ-体とは1250M^<-1>,Δ-体とは590M^<-1>の結合定数で錯体を形成し,不斉選択的錯形成が起こることが分かった.Rh錯体も同様の形成をするが,その不斉選択性はRu錯体に比べてかなり低下した.この錯形成はエントロピー的に有利であり,ゲスト分子がクーロン相互作用に助けられながら,CDの空洞に包接される際に脱溶媒和を伴うことが,正のエントロピー変化をもたらしたものと思われる. α-メチルフェロセンカルボン酸(FMCA)の面不斉認識についても検討した.その結果,β-CDやβ-CDの全ての水酸基をOMe化したTMe-β-CDが(S)-SMCAと選択的に結合することが分かった.これまで面不斉をCDで認識する例は我々の研究室から報告した1例しか知られておらず,今回が2例目となる.NMRによる詳しい検討から,フェロセンはβ-CDの第二級水酸基側から包接され,カルボキシル基を水相に突き出した構造をしていることが明らかとなった. その他,ポルフィリン-CD錯体の超分子化学的研究にも着手し,興味深い結果を得ているが,紙面の都合上,割愛する.
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