研究概要 |
1, シクロへキサジエノン鉄カルボニル錯体を,そのO-アルキルオキシムエーテルに変換し,高次有機銅試薬と反応させることにより,メタ-アシルアニリン誘導体を合成することに成功した。さらに,同様な反応をアルキリデンシクロへキサジエン鉄錯体に応用することにより,メタ-アシル置換アルキルベンゼン類を合成できることも明らかにした。通常アルキル置換ベンゼン類をFriedel-Crafls反応によりアシル化すると,パラ置換体あるいはオルト置換体が得られるのと対照的であり,新たな合成手段を提供することができた。 2, オキシム水酸基を弱い脱離基に変換することにより,Beckmann転位を起こさせずに求核剤と窒素原子上で置換させることを試みた。その結果,メタ-ヒドロキシフェネチルケトンオキシム誘導体から,還元剤存在下,8-ヒドロキシテトラヒドロキノリンを選択的に合成することに成功した。また,分子内に活性メチン部位を有する化合物を合成し,これに塩基を作用することにより,メタンスルホニルオキシムの分子内環化反応が進行し,官能基を持つジヒドロピロール誘導体あるいはテトラヒドロピリジン誘導体が合成できることがわかった。このように,オキシムの窒素原子上での求核置換反応を利用することにより,新たな含窒素複素環合成法を確立することができた。
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