研究概要 |
1.前年度までの研究において、オキシム化合物のヒドロキシ基を適当な脱離基に変換することにより、Beckmann転位を起こさずに求核剤と窒素原子上で置換反応が進行することを見出している。本年度は分子内に活性メチン部位を有する化合物を用いて、塩基条件による分子内環化反応について詳細な検討を行い、様々なピロール誘導体、ピリジン誘導体の合成に応用できることがわかった。また窒素原子上での求核置換反応を分子間反応に応用することで、オキシム化合物が有機金属試薬に対する求電子的アミノ化剤となることを見出した。すなわち、脂肪族Grignard試薬に対し、触媒量の銅塩存在下オキシム化合物を作用させると窒素上での置換反応が進行し、対応するイミンが生成する。これを加水分解することにより、第一級アミン高収率で得られる。また、芳香族Grignard試薬を出発物質とした場合には、銅塩を用いずに非極性溶媒中反応させることにより、対応するアニリン誘導体が高収率で合成できる。 2.オキシム化合物を1電子還元することによって生成するラジカルアニオン種は、窒素中心ラジカル(アルキリデンアミニルラジカル)としての反応性を有し、分子内のアルケン部位への付加反応が進行し、対応する環状含窒素化合物類が合成できることがわかった。1電子供与剤としてナトリウムフェノラートなどを用い、分子内にアンケル部位を持つO-2,4-ジニトロフェニルオキシムとの反応を試みたところ、アルキリデンアミニルラジカル等価体が生成し、環化反応の後生じる炭素中心ラジカルをラジカル捕捉剤により捕捉することによって、ジヒドロピロール化合物が合成できた。またこの反応を用いることにより、Xenovenineの合成を達成した。
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