研究概要 |
本研究は、電子や水素結合やプロトンの供与体-受容体、酵素と基質、抗原と抗体、レセプターと情報伝達物質、光生物学の光受容体と反応中心、遺伝子と蛋白合成、等の組み合わせで、モデル化された種々の異種化合物間の二成分結晶を構築し、その構造を解明し、(光)反応性を調べ、分子の配列と2分子反応の関係を究明するために企画した。本年度は、従来からの方針に基づき、先ず、電子供与体-電子受容体、水素結合供与体-水素結合受容体、プロトン供与体-プロトン受容体の組み合わせで種々の二成分結晶を作製した。作製方法は再結晶法のほかに乳鉢上で混ぜ合わせる手法も用いた。これらの作製方法が固相反応性に及ぼす影響を調べた。また、これと並行して溶液光反応も行い、固相光反応との相違を明らかにした。例えば、従来、桂皮酸類の固相光二量化反応の制御のためにゴーシュ型1,2-ジアミンを用いてきたが、今回は、塩を形成するほど相互作用が強くないその他の種々の水素結合性リンカーを試み、予想外に有望なリンカーを幾つか見いだした。。インドールと桂皮酸との異種分子間の固相環化付加反応も研究している。以上の研究に際し、本補助金で購入した粉末X線回折装置により多くの二成分結晶の同定が可能になり、研究が飛躍的に進みつつある。固相光反応の特長の原因を結晶構造、結晶密度や自由空間、分子の配置、原子間距離を基にして解析するために、単結晶X線構造解析を行う必要があるが、これを共同研究に頼らなければならないのは残念である。近い将来にこの不便さを解決できればと願っている。
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