本年度は4年間の継続課題の最終年度に当たるので、アミンとの二成分結晶形成によるアルケン特にフマル酸の固相光二量化反応の反応制御および立体構造制御に関する研究をまとめつつある。アルキルアミンの場合は、研究した全てのアルキル基についてフマル酸の固相光二量化反応は起こらず、シス体への異性化反応のみが進行した。無置換のアルキルアミン即ちアンモニアのときにのみ固相光二量化反応は起こった。一方、芳香族複素環アミンの場合は得られた二成分結晶のほぼ全てが固相光二量化反応を起こした。特に、イミダゾールは高収率で二量体のみを生成した。まだやり残している実験があるが、一般に二成分結晶中のアルケン酸の固相光二量化反応が円滑に進行するためには、アミン分子の大きさが小さいか又は平面である必要がある。 又、生体に存在する固体色素であるが、その構造や機能が未解明であるメラニン、及び、パーキンソン病、精神分裂病、アルツハイマー病等の神経性疾患治療薬として期待されるドーパミン誘導体に着目して、メラニン類似物質やドーパミン誘導体の合成、反応、同定の研究を行った。例えば、ニトロ化合物とドーパミンの二成分結晶を加熱するとドーパミンが重合し黒色のメラニン類似物質を与える。しかし種々の実験結果から、その構造はメラニンとは異なり、フェノール水酸基が脱水縮合した構造であることが示された。
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