研究概要 |
本研究では、ランタノイドの有する特性を不斉触媒の設計に最大限取り入れて革新的不斉触媒を創製し、これにより触媒的不斉合成手法のブレークスルーを目指している。 1.キラル希土類ルイス酸触媒 新規光学活性希土類ルイス酸触媒として、ビナフチルリン酸の3,3'位あるいは6,6'位に種々の置換基を有する誘導体、ならびにオクタヒドロビナフチルリン酸など5種のキラルリン酸の希土類塩を合成した。これらを用いてヘテロDiels-Alderにおける不斉触媒能を評価したところ、興味深いことに中心金属から離れた位置にある6,6'位の置換基がエナンチオ選択性に大きく影響し場合によってはそのセンスを逆転させることが判った。また、新規スカンジウム錯体触媒を用いて、これまでで最高のエナンチオ選択性を室温での反応において達成した。 2.キラル希土類塩基触媒 ランタン-ビナフトール錯体触媒を用いるエノン類の不斉エポキシ化反応において、アキラルな外部配位子としてトリフェニルホスフィンオキシドを添加すると、錯体の会合が解け単一触媒活性種を与えるため、高エナンチオ選択性が発現することを見い出した。また、低光学純度の配位子を用いてもほぼ完璧なエナンチオ選択性を与える顕著な不斉増幅現象が観測された。本触媒は1モル%の使用でほぼ定量的かつ光学的に純粋な生成物を室温での反応で与えるため、極めて実用性が高いと考えられる。 3.キラルサマリウム(II)錯体による分子間不斉ラジカル反応 キラルな2価のサマリウム錯体を調製し、これを用いてβ-一置換アクリル酸アミドの還元的二量化反応を高エナンチオ選択的に進行させることに成功した。
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