研究概要 |
1.単離・保存が可能な実用的キラル希土類ルイス酸触媒として、一連の光学活性希土類ビナフチルリン酸錯体の調製を行い、これらがヘテロDiels-Alder反応の優れた不斉触媒となることを見出した。また、これまで実現されたことのなかった金属/不斉配位子=1:3系における顕著な不斉増幅現象を見出し、低い光学純度の配位子から光学的に純粋な希土類錯体が自発生成すること、また、本現象がイオン半径の似通ったランタノイド錯体に一般的であることを明らかにした。 2.ランタン・ビナフトール・トリフェニルホスフィンオキシド・クメンヒドロパーオキシド複合錯体が共役エノンの不斉エポキシ化反応における極めて優れた触媒となることを見出した。また、極めて大きな不斉増幅を与えることを見出し、低光学純度の配位子を用いて>98%eeの生成物を得ることに成功した。触媒量は0.5mol%まで減じることができ、また、基質100gスケールの実験において反応剤や溶媒等を一切精製することなく90%ee以上の選択性が得られていることから、本法は実用性の高い不斉エポキシ化法となることが期待される。さらに、アキラル配位子であるホスフィンオキシドにフッ素置換基を導入すると触媒活性種の寿命が長くなることも見出している。 3.触媒反応ではないが、キラルな2価のサマリウム錯体を調製し、これを用いてβ置換アクリル酸アミドの還元的ニ量化反応において、完全なジアステレオ選択性と高度なエナンチオ選択性を同時に達成した。これにより、高光学純度の3,4-ニ置換アジピン酸誘導体が一段階の反応で合成可能になった。また、1,5-位に不斉炭素を有するジアステレオマー混合物の低原子価サマリウムによる速度論的分離にも成功しており、電子移動反応における遠隔不斉識別が可能であることを初めて明らかにした。
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