本研究では顕微分光法の最適化をはかり定量性を確立するとともに、広く分析化学へ応用するために、試料の形状・次元性・大きさ、および試料内での分析対象の分布状態などが異なる種々の試料に対して顕微分光による測定を行った。具体的には、分析化学において顕微分光法が用いられる試料として、(1)薄膜(1次元)試料:液膜、高分子薄膜など、(2)管状(2次元)試料:マイクロキャピラリー(シリカ、ポリマー)、マイクロチャンネルチップなど、(3)球状(3次元)試料:液滴、固体微粒子(高分子、ガラス)、マイクロカプセル、脂質二分子膜から成るジャイアントベシクル、細胞(酵母)などを用いた。これらの試料に対して、種々の方法で色素を導入し、マイクロメートルオーダーの空間分解能で、吸収・発光スペクトル、およびケイ光減衰を検討した。特に、形状および色素の分布状態が分光データに与える影響を、次元性を基に明らかにした。同一量の色素が導入されても、見かけの吸光度、発光強度、スペクトルが変化すること、およびそれらの変化の度合いが分布状態、試料形状、サイズに大きく依存することを実験的・理論的に明らかにした。さらに、これらの知見を基に、顕微分光データから正確な試料濃度を決定できるだけでなく、試料の微視的な分布状態を議論する方法を提案した。
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