研究概要 |
1. 脳内NMDAレセプターの同定法の創案を目指し,各分子種(ε1-4/ζ1)1個が平面脂質二分子膜系において透過させるイオン量を定量した.Chinese hamster ovary細胞から単離したε1-4/ζ1各分子種をtip-dip法によって作成した平面脂質二分子膜中に包埋した.NMDAレセプターの3種の典型的アゴニストのL-グルタミン酸,NMDA,L-2-(カルボキシシクロプロピル)グリシン(L-CCG-IV)に対するシングルチャンネル電流を記録し,電流値を時間に対して積分して総イオン透過量(クーロン数)を求めた.その結果L-グルタミン酸が誘起する総イオン透過量は,レセプター分子種によって異なり,脳内レセプター同定のための指標となることが分かった. 2. ラット脳より抽出したグルタミン酸レセプターを含むプロテオリポソーム内に,Ca^<2+>を導入し,アゴニストに誘起されたCa^<2+>流出量を測定し,グルタミン酸レセプターのCa^<2+>透過量に基づくイオン特異的なアゴニスト選択性を定量的に評価した.その結果,Ca^<2+>イオン放出量に基づくアゴニスト選択性としてL-CCG-IV>L-グルタミン酸>NMDAが得られた. 3. マルチチャンネルを透過する総イオン量に基づいてε1-4/ζ1 NMDAレセプター各分子種のもつアゴニスト選択性を評価した.その結果,マルチチャンネル応答に基づく選択性の序列はシングルチャンネル応答に基づく選択性と同様に各分子種ごとに異なった.本アプローチによるアゴニスト選択性もまた各分子種同定の指標となることを見い出した. 4. Tip-dip法でのレセプター包埋確率を向上させるための基礎研究として電荷を有する色素のキャピラリー内での泳動挙動を検討し,負の電荷を持つ色素の泳動速度が負の電荷によって促進され,またキャピラリー先端に濃縮されることを見い出した.
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