本研究は、界面の電位制御と分光学的手法を組み合わせた界面特異的反応研究法の確立を通じて、1.界面特異的反応の検出、2.界面特異的反応のメカニズムの解明、を行うことを目的としている。今年度は、実験方法の確立を目指した。 1. まず、これまで、原理的には測定できることがわかったが、感度などの点で信頼度の高い結果かえられていなかった交流変調全反射界面蛍光法の改良に重点を置いた研究をおこなった。測定セルの改良を行ったところ、振幅40mVp-p、変調周波数 5-80 Hzの範囲で、エオシンYなどのキサンテン系色素アニオンの移動にともなう、蛍光変化の交流成分を検出することに成功した。交流成分の絶対値を直流電圧にたいしてプロットすると、交流インピーダンス法の場合と同様のベル型曲線となり、極大となる電位はイオン移動の半波電位に一致した。交流インピーダンス法とは異なり、光応答の交流成分は充電電流の寄与を含まない。それ故、移動イオンを含まない系の実成分にたいする虚成分の比はそのままイオン移動過程の-tanφ(φは位相角)を与える。これは交流インピーダンス法のcotφに相当する物理量である。 |tanφ|は、周波数が10-20Hzで半波電位付近では1より小さくなり、移動イオンは界面に吸着していることが示唆された。 2. Nd-YAGレーザーを用いる全反射界面蛍光装置の構築を現在、行っている。光計測制御と界面電位差制御を一括してコンピュータでおこなうために、現在、ソフトウェアを開発中である。 3. 分子レベルで制御された単分子膜を利用する、新しい液液界面電荷移動計測法を開発するために、真空蒸着装置を購入し、金表面の自己組織膜の調製、キャラクタリゼーションを行っている。
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