研究課題/領域番号 |
10440220
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
垣内 隆 京都大学, 工学研究科, 教授 (20135552)
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研究分担者 |
保原 大介 京都大学, 工学研究科, 助手 (60303864)
山本 雅博 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60182648)
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キーワード | 液液2相系 / 界面特異的反応過程 / アゾカップリング反応 / 芳香族ジアゾニウムイオン / ラジカル重合 / ポリスチレン / エマルション重合 / 界面不安定性 |
研究概要 |
液液2相系における界面特異的反応過程の研究の最終段階として、反応系の拡張を行った。また、これまでの研究で不十分であった液液2相系におけるアゾカップリング反応の機構についてより詳しく検討した。(1)液液2相系におけるアゾカップリング反応では、反応によって生成する水素イオンの水相への帰還が考慮されていなかった。これを考慮した新しい反応機構により、サイクリックボルタモグラムの挙動を満足に説明することが出来た。(2)イオンの界面移動に続く化学反応の新しい例として、油相側に移動した芳香族ジアゾニウムイオンの還元反応をとりあげ、電気化学的に検討した。調べたジアゾニウムイオンはいずれも、油相側に含まれる還元剤デカメチルフェロセンによって還元されることを確認した。この反応はきわめて早く、調べた濃度範囲と掃引速度範囲では電気化学的に可逆、つまり拡散律速である。この反応により生成したデカメチルフェリセニウムイオンは油相側にとどまる。一方、この反応では、芳香族ラジカルが生成する。これを確認するために、油相にスチレンモノマーを加え、掃引をくり返して、界面に膜が生成するか否かを観察した。数十分後には、界面に被膜らしきモノが観察された。これに対応して、界面を横切るテトラエチルアンモニウムイオンの移動速度は2桁以上小さくなった。また、界面付近の油相側をピペットで吸い取り、メタノール中に注入すると白濁したことからも、ラジカル重合により界面近傍にポリスチレンが生成していることが確認された。これは液液2相系における新しい化学反応であり、エマルション重合の機構解析に有効であると考えられる。(3)界面で電子移動とイオン移動が共役する現象は普遍的に重要であるが、定量的な解析は十分ではない。本研究では、アルカンチオール自己組織膜で修飾した金表面に油相薄膜を形成し、それを水溶液と接触させることにより生じる油相薄層、|水界面における電子移動-イオン移動共役を実験的および理論的に検討し、満足のいく一致を見た。(4)液液2相系の反応で重要な界面の安定性についての新しい理論を提唱した。これは、液液界面の電気化学のみならず、広く自然現象に適用されるべき一般性のある新しい理論である。これにより、界面化学の長年の謎が解けたと考えている。
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