研究概要 |
逆ミセル界面の化学発光分析法への活用において,特定の金属錯体がその界面での物質移動に伴って化学発光反応に対する触媒能を誘発することを見いだし,そのような反応特異性の発現機構を解明する目的で,その要因について調べ,下記のように,新たな知見を得るとともに,その化学発光分析への応用の可能性を明らかにした。 1.ビピリジン-鉄(II)錯体か逆ミセル界面への吸着によってトリス錯体に変化することを見出し,その可視吸収スペクトルの経時変化をストップトフロー分光光度計で観測し,その反応機構を解析した。 2.ポルフィリン-亜鉛錯体及びテトラメチルサイクラム-ニッケル錯体をプローブとして用い,(1)前者の酸解離がミセル界面で起こり,亜鉛イオンがその内水相に取り込まれる反応を見いだし,上記1と同様にストップトフロー分光法を用いて解析し,分子動力学法によって予測されるように,その界面ミクロ反応場に内水相から水や塩化物イオンが浸み出し,錯体の吸着と解離を引き起こすこと,(2)その浸み出しには界面活性剤の極性基への親和性とバルク溶媒との相互作用が重要な因子となること,(3)さらに,後者をその内水相に分散させ,配位平衡の変化に伴うソルバトクロミズムを観測し,その内水相の界面近傍の特性を明らかにした。 3.逆ミセル中でのルミノール化学発光(CL)反応に対する鉄(III)のオキシン錯体やバナジルのアセチルアセトン錯体の特異な触媒作用の発現は,(1)これらの錯体がその界面で解離し,過渡的に生成される金属イオンに帰因すること,(2)後者の解離反応を上記1及び2と同様にストップトフロー分光法を用いて解析し,炭酸イオンとの特異な相互作用によって,その解離が促進され,CL増幅が高まることを明らかにした。(3)さらに,溶媒抽出法と組み合わせることによって選択的で高感度なバナジウム及び鉄のCL分析法に各々応用できることを確認した。
|