研究課題/領域番号 |
10440226
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大石 陸生 神戸大学, 理学部, 教授 (80030782)
|
研究分担者 |
畠山 正統 神戸大学, 理学部, 助手 (50281142)
竹田 真木生 神戸大学, 自然科学研究科, 教授 (20171647)
内藤 親彦 神戸大学, 農学部, 教授 (70031226)
|
キーワード | 昆虫 / 分子系統樹 / ビテロジェニン |
研究概要 |
本研究は、広く卵生の動物種で一次構造が保存されている卵黄蛋白質遺伝子に着目し、これを分子マーカーとして昆虫系統樹の作成を試みるものである。 本年度の最大の成果は、卵黄蛋白質遺伝子cDNAクローニングについて簡便且つ迅速な方法を開発したことである。従来法では、ゲル電気泳動による卵黄蛋白質の同定、抗体の作成、cDNA発現ライブラリーの作成と抗体によるスクリーニングが必要であった。 まず、我々のこれまでの結果を含めて完全長クロ-ンが得られている昆虫卵黄蛋白質遺伝子cDNAについての解析から、C末端から200-300アミノ酸の位置によく保存されている短いモチーフを確認した。そこで、特定のアダプター配列に挟まれている2本鎖cDNAライブラリーを準備し、短いモチーフに対する縮重プライマーとアダプター配列を用い、PCRにより3'側の700-900塩基対を増幅し、クローニングし、塩基配列を決定し、アミノ酸配列を予測し、すでに知られている卵黄蛋白質のアミノ酸配列と多重整列(アラインメント)を行い、確認し、次いでそのクローンに基づいて作成した遺伝子特異的プライマーとアダプター配列を用いてPCRにより5'側を増幅し、クローニングするという方法を開発した。この方法によりチャバネアオカメムシで3分子種の卵黄蛋白質遺伝子の完全長cDNAクローンを得ることに成功した。卵黄蛋白質については、ある種の昆虫では複数の遺伝子があるといわれてきたが、実際に複数遺伝子のクローニングに成功したのが、昆虫でははじめての例である。 この手法により、従来法では困難が予想される微細昆虫、一度に多数のサンプルが得られない昆虫についても研究が進展することが期待される。また、卵黄蛋白質はいわゆる環境ホルモンの作用の指標とされるものであり、新手法の昆虫以外の動物への適用も考えられる。
|