1.tax-6変異体の行動遺伝学的解析 tax-6変異体は、飼育温度にかかわらず常に高温を好むという好熱性の温度走性異常を示し、さらにNaClに対する化学走性も異常である。tax-6遺伝子は、カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質脱リン酸化酵素であるカルシニューリンのAサブユニットをコードし、温度受容ニューロンAFDを含む、感覚ニューロンのほとんどで主に発現している。tax-6変異体において、TAX-6カルシニューリンをAFDのみで特異的に発現した場合、温度走性異常は完全に回復したが、他の異常は回復しなかった。以上の結果は、tax-6遺伝子がAFDニューロンで細胞自律的に機能している事を示唆している。さらに本研究で、tax-6変異体は、ASH感覚ニューロンが媒介する高浸透圧に対して高感受性を示すことがわかり、また、AWC感覚ニューロンが媒介する揮発性物質への誘因行動(化学走性)に対しても、高感受性を示すことが、明らかになった。いろいろな組み合わせで、2重変異体を作成して、それらの行動を解析したところ、TAX-6カルシニューリンは、感覚受容による感覚ニューロンのシグナル伝達経路において、カルシウムチャンネルを介したカルシウムの流入依存的に活性化し、感覚入力の強度に応じて、シグナル伝達の効率を制御している事が示唆された。我々の結果は、TAX-6カルシニューリンが、負の制御因子として機能することを初めて明らかにした。 2.新規の温度走性異常突然変異体の単離と原因遺伝子のクローニング 本研究において、新規温度走性異常変異体を多数単離した。その中で、ttx-4変異体は、好熱性異常を示し、化学走性全般にも異常を示す。ttx-4変異の原因遺伝子をクローニングしたところ、哺乳類におけるタンパク質リン酸化酵素C(PKC)のイプシロンタイプをコードしており、温度走性に関わるニューロンを含む、多くの感覚ニューロンと介在ニューロンで発現していることがわかった。
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