(1)ヤナギルリハムシの産卵選好性と幼虫の生存率の関係を調べた。両者の関係は寄主植物のヤナギの種間で大きな変異があるとともに、ハムシの遺伝的変異に基づいた地理的な変異があることが明らかになった。 (2)ヤナギを利用するポプラシロハモグリの生存要因とその作用について解析した。天敵の作用、種内競争、落葉、卵の落下はいずれも密度依存的に増加した。 (3)ヤナギの葉にゴールを作るハバチの密度と生存率は、ヤナギ個体の樹齢に依存して低下した。捕食寄生者の密度は樹齢とともに増加したが、逆に、同居者のゾウムシの密度は低下した。この天敵の密度の変化に対応して、寄生率は樹齢の高いヤナギで低く、同居者による死亡率は高かった。 (4)ヤナギを寄主とするマエキアワフキは当年シュートの内部に卵を産み込む。この産卵習性によって、シュートの先端部は枯死するが、翌年のシュート成長は促進するという補償作用が確認された。この作用は先端部に近いシュートで著しく、このため頂芽優勢によって引き起こされることが明らかになった。 (5)ヤナギの葉から放出される揮発性物質を解析した。葉に由来する揮発性物質の組成と量はヤナギの種に特異的であることがわかった。また、クラスター分析に結果より、揮発性物質のヤナギ種間のパタンがそれに依存した昆虫の群集パタンと一致していることが示された。 (6)石狩川河川敷のオノエヤナギの化学的キャラクターを分析した。その結果、オノエヤナギには2つの化学種(アンペロプシン型とケイ皮酸グルコースエステル型)が存在し、ヤナギルリハムシの成虫の摂食選好性は、各化学種によって大きく異なった。寒天板上にアンペロプシン型のオノエヤナギの粗抽出物を塗布したところ、高い頻度でハムシが定着した。さらに、成虫の摂食促進活性がアンペロプシン相当部分に分布することを確認した。以上の結果から、アンペロプシンがヤナギルリハムシの成虫の摂食促進物質であると考えられた。
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