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2000 年度 実績報告書

常緑広葉樹林構成種のニッチ分化とシュートの形態的、フェノロジー的特性

研究課題

研究課題/領域番号 10440229
研究機関東京大学

研究代表者

大沢 雅彦  東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (80092477)

キーワード常緑広葉樹 / 芽タイプ / 樹冠形成 / 側枝タイプ / 階層構造 / 林冠木 / 下層木 / 頂芽優勢
研究概要

日本の常緑広葉樹林を、その北限としての特性に着目して、群落構造、構成種の種特性などの点から明らかにすることを目的に調査・研究を行った。シュート・フェノロジー、葉やモジュール構造を含めたシュートの形態、樹形形成、地形にともなう分布なとから解明した。本年度はとくに林冠と下層を住み分ける2群の芽タイプが異なる植物の特性をシュート・モジュールの構造的特性に着目して調べた。森林の下層で共存する上層木の若木と下層木を比較すると林冠を構成するスケール芽の樹木は林冠の枯れ上がりが激しい、すなわち最下枝が交代して上方伸長が活発である、のに対して下層木は下枝が長く生き残り次第に樹冠が厚くなる傾向が見られた。このことは最下枝の年齢を調べてみると明らかに下層のヒプソフィル芽の樹種が林冠木の若木の最下枝年齢よりも大きいことからも確認できた。また、一個のシュート・モジュールをとってみると、モジュール長、葉数ともに林冠木のほうが大きいが、モジュールあたりの葉数や葉面積にしてみると下層のヒプソフィル芽の樹種の方が大きな値を示した。すなわち、林冠木は伸長優先で被陰回避、下層木は葉面積を大きくすることで光不足の下層で耐陰性を高める適応的な属性を持っていた。林冠木のスケール芽樹種と下層木のヒプソフィル芽樹種は成熟個体のサイズが異なるが、この最大サイズはモジュールの積み上げの結果として起こる。2つの芽タイプの樹種はモジュールサイズが違うことのほかに、モジュール同士の相互の連続性が異なる。すなわち、ほとんどのスケール芽の樹種は全てのモジュールが独立して形成される(同時枝は除く)のに対し,ヒプソフィル芽の樹種は同時枝を持つ種が多いために、芽の内部だけでなく伸長してきた主軸と側軸との間にも優劣関係が生まれ、結果的に長い主軸と短い側軸が形成されることになる。これは個体全体としては頂芽優勢(apical control)が働き、excurrentな樹冠を形成する。他方、スケール芽の樹種は全ての枝が基本的には同格なので、樹冠はdecurrentな構造を示し、モジュールが作られる限りは、上方伸長が可能となる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (8件)

  • [文献書誌] Bhtuju,DR & Ohsawa,M: "Patch implications in the maintenance of species richness in an isolated forest site"Biological Conservation. (In press).

  • [文献書誌] Nitta,I & Ohsawa,M: "Geographical transition of sylleptic/proleptic branching in three Cinnamomum species with different bud types"Annals of Botany. 87. 35-45 (2001)

  • [文献書誌] 大沢雅彦: "土壌と植生 -土壌-植生系の進化地理-"ペドロジスト. 44・2. 124-127 (2000)

  • [文献書誌] Nitta,I & Ohsawa,M: "Phenological and bud morphological traits of evergreen broad-leaved trees under the strong seasonal climate at northern limit in East Asia"Proceedings of International Symposium on the Qinghai-Tibetan Plateau. Chinese Academy. 357-364 (2000)

  • [文献書誌] Tang,CQ & Ohsawa,M: "Transitional pattern of tree leaf-types from tropical to temperate forests on Mt.Emei."Proceedings of International Symposium on the Qinghai-Tibetan Plateau. Chinese Academy. 397-407 (2000)

  • [文献書誌] 大沢雅彦: "熱帯と温帯の比較 -生態系の機能的側面-"Tropics. 9・3. 167-168 (2000)

  • [文献書誌] 大沢雅彦(監修・分担執筆): "生態学から見た身近な植物群落の保全"講談社(印刷中). 300 (2001)

  • [文献書誌] 大沢雅彦・新田郁子(分担執筆): "常緑広葉樹のシュートフェノロジーと芽の構造 (千葉県誌、自然編第5巻)"千葉県(印刷中). (2000)

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公開日: 2002-04-03   更新日: 2016-04-21  

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