歩行型社会性昆虫の初期巣における栄養、発育制御物質及び共生微生物の伝達・作用機構

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10440231
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松本 忠夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90106609)
• キーワード: 社会性昆虫 / 歩行型 / 栄養物質 / 発育制御物質 / フェロモン / 共生微生物 / タカサゴシロアリ / オオシロアリ

研究概要

野外調査として、研究材料であるタカサゴシロアリ、タイワンシロアリおよびクロトゲアリなどを得るために、5月下旬および6月上旬に沖縄県の西表島に、また、オオシロアリおよび家族性のゴキブリを得るために、7月に鹿児島県の屋久島へ採集にでかけた。同時にそれらの昆虫の初期コロニーの生息状況の調査を行った。12月末から1月始めにかけて、オーストアリアでの国際社会性昆虫学会議に参加して研究発表を行った。
実験室内では以下の研究を行った。シロアリ類におけるカスト分化制御物質(フェロモン)の伝達と兵隊への分化の遺伝 兵蟻分化に特有の物質はどのようなものか、それはどこで作られ、その際、どの様な遺伝子が発現しているのか。その遺伝子をデファレンシャル・デスプレー法で調べた。
屋久島産のオオシロアリを材料に用いて、腸内容物の分析、脂肪体での尿酸蓄積そして親成虫から子虫への栄養交換の頻度の測定などを行った。
シロアリ類において、消化管の壁面にさまざまなバクテリアが付着して共生しているが、本テーマでは、それらのバクテリアの役割がいかなるものであるか、およびそれらのバクテリアの分子系統学的な位置について研究した。
高等シロアリであるタイワンシロアリと担子菌類との栄養生態学的な関係がいかなるものかを研究する。特に、創設期の成虫がどの様にして菌を運ぶのかに注目する。また、シロアリの進化系統と菌類の種組成との関係を、分子系統学的手法を用いて研究した。

研究成果

• [文献書誌] Miura T.& Matsumoto T.: "Open-air litter foraging in the nasute termite Longipedi-termes longipes (Isoptera:Termitidae)" Journal of Insect Behavior. 11. 179-189 (1998)
• [文献書誌] Maekawa K, Matsumoto T.et al.: "Genetic variation and molecular phylogeny based on the mitochondorial genes of the dampwood termite" Entomological Science. 1. 561-572 (1998)
• [文献書誌] Miura T.Roisin Y.& Matsumoto T.: "Developmental pathways and polyethism of neuter castes in the processional nasute termite Hospitalitermes medioflavus" Zoological Science. 15. 843-848 (1998)
• [文献書誌] Miura T.Matsumoto T.et al.: "Phylogenetic relationships among subfamilies in higher termites (Isoptera:Termitidae) based on Mitochondorial COII" Annl.Entomol.Soc.Amer.91. 515-523 (1998)
• [文献書誌] Masuko K., Murakami M.& Matsumoto T.: "Polygyny and monoandry in the ant Formica japonica (Hymenoptera: Formicidae)" Zoological Science. 15. 409-414 (1998)
• [文献書誌] Miura T.& Matsumoto T.: "Foraging organization of the open-air processional lichen feeding termite Hospitalitermes (Isoptera, Termididae)" Insectes Sociaux. 45. 17-32 (1998)