平成10年度研究実績の概要 昭和60年以来、個体群生態学的研究を継続している乗鞍岳において、本年度も継続調査を行なったところ、標高2600m以上の山頂部に81個体のイワヒバリが生息していることがわかった。81個体のうち前年から継続して乗鞍岳に生存した成鳥は48個体で、前年に78個体標識した若鳥の29%(23個体)が本年度帰還していることがわかった。多の鳥類に比べ極端に高い若鳥の帰還率を考慮すると乗鞍個体群は遺伝的多様性のかなり低い集団と推測される。捕獲した個体は血液を採集し、マイクロサテライト多型分析のためDNAを抽出した。平成11年2月に各地の日本野鳥の会会員から乗鞍岳で繁殖した個体の越冬地に関する三つの情報を得た。ひとつは山梨県塩山市の一ノ瀬、ふたつ目は長野県長谷村の戸草ダム予定地、三つ目は長野県中川村小渋ダムである。越冬個体群は繁殖個体群の遺伝的多様性にどのような影響を与えているか調べるため現地調査を行い、一ノ瀬では16個体、戸草ダム予定地で5個体、小渋ダムで3個体の越冬個体を捕獲し、いずれも採血した。イワヒバリの中でも特に隔離された個体群を持つ白山で個体数推定調査を行い、山頂部で40個体のイワヒバリを確認した。うち15個体を捕獲し、少量の血液を採集した。採集された血液もマイクロサテライト多型分析のためすべてのサンプルからDNAを抽出した。平成11年度は調査地を中央アルプス、妙高山、立山に拡大し、各山岳の個体数推定と十数個体からの採血、およびマイクロサテライト多型分析の指標作成にあたる予定である。
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