研究概要 |
1.1999年にレーザー測距器付セオドライトを用いた広葉樹林3次元構造の本調査を行った。その構造解析の結果、コナラの樹冠が、地形および隣接する個体の影響をうけて可塑的に発達していくことが判明した。この結果はまた、樹木の空間的な競争過程をシミュレートするモデル(前年度国際学会で口頭発表済み)で予測された結果を支持するものであった。また、コナラ樹冠部の枝の分岐構造等を調査した。その結果、林冠部において、当年生枝数や葉量が維持されるメカニズムの一部が明らかとなった。方法論をまとめた論文が学会誌に受理されたほか、現在これらの結果をまとめた論文2編を作成中である。 (以上隅田) 2.田中が開発したレーザー面測距法により、コナラ林における葉群の空間構造の調査を1999年9月に行った。この結果は現在解析中である。 (以上 田中) 3.樹冠ギャップの存在を無視すると、平均値レベルでの樹冠体積と個体葉量とのアロメトリーの冪係数が自然間引き線の傾きの絶対値に等しくなる(Osawa 1995)。樹冠ギャップの存在を仮定した場合の自然間引きの法則と葉の空間分布の関係を探るため、いくつかのバンクスマツ同齢林を測定し、解析した。隣接木との樹冠の重なりや、風による幹のゆれを考慮しなければ自然間引きパターンが説明できないことが分かった。これらの結果については、現在解析中である。 (以上 大沢) 4.樹冠を構成する個々の枝の挙動の環境依存性の調査を進めた.林床に生育する常緑広葉樹の稚樹を材料として,個々の枝の光微環境およびその個体のおかれた光環境の影響を解析した.その結果,枝の生存率や子枝生産数は暗いほど低下すること,ただし,その枝の属する個体全体が暗い条件下にある場合には,生存率や子枝生産数は比較的高く保たれることが明らかとなった.この成果をまとめた論文が学会誌に受理された(Takenaka,A.Responses to light microenvironment and correlative inhibition in the growth of shoots of tree seedlings under a forest canopy.Tree Physiology(in press))。 (以上 竹中)
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