黄金色藻類やクリプト藻類は、光合成を行いながら鞭毛虫のように細菌も捕食するため、混合栄養藻類と呼ばれている。混合栄養藻類は、しばしばブルームを形成するが、これは2つの栄養摂食様式をもつことが関係していると考えられてきた。しかし、最近の理論研究から混合栄養藻類は必ずしも自然界においては有利ではないことが示唆されている。なぜなら、混合栄養藻類は光合成器官と食べた細菌を消化する器官の両者をつくらねばならず、光合成や細菌食の「専門家」である植物プランクトンや原生動物に比べてコスト面で不利となるからである。 本研究は、琵琶湖に出現する黄金色藻類Uroglena americanaを主たる対象とし、彼らがなぜプランクトン群集のなかで卓越できるのかを生態学的に明らかにするために行った。その結果、琵琶湖に出現する混合栄養藻類は細菌からリンや窒素などの栄養塩元素を獲得することが出来、栄養塩枯渇下では他の藻類に比べて競争的に有利であること、しかし細菌をめぐる競争では鞭毛虫類のほうがむしろ有利であることが明らかとなった。一方、Uroglena americanaは大きな群体を形成するため動物プランクトンには捕食されないことも明らかになった。これらの結果から、混合栄養藻類のプランクトン群集での卓越には競争と捕食が関与しており、栄養塩の枯渇に加え動物プランクトンが鞭毛虫を除去することによってUroglena americanaのブルームが形成されると推定された。
|