研究概要 |
高等植物のミトコンドリアには,.他の生物に共通のシトクロム経路のほかに,ATPを生産しないシアン耐性経路がある.もし,このシアン耐性経路に全ての電子が流れでしまうと,光合成産物を消費して得られるATP量は,最大量の1β程度に抑えられてしまう.したがって,このシアン耐性経路の寄与率を測定することは,呼吸から得られるエネルギーの収支を知る上で必須である.さらに,この経路の制御システムを知ることにより,呼吸系の生態学的応答の一部があきらかになる. 現在,in vivoにおけるこの経路の寄与率を正確に知るためには,チトクロム経路のcytochromec oxidaseと,シアン耐性経路のalternative oxidaseそれぞれの酸素の安定同位体分別が異なることを利用して測定するしか方法がないわれわれは,平成9年度に,このためのシステムを安定同位体測定の専門家である資源環境技術総合研究所上田真吾博士の指導のもとに,すでに構築した.本研究の最終目的は,シアン耐性経路の測定をルーチン化して,呼吸エネルギー生産・消費系を正確に理解することである. 本年度行ったことは,以下の2点である. ・ すでに完成していた,呼吸測定・気体サンプリングシステムをつくば市より大阪大学に移設し,大幅な改良を加えた. ・ 人工気象室(本研究費で購入)を用いて,陰生植物,陽生植物各数種を,温度・湿度・光環境を制御して試験栽培した. 平成10年に筑波大学から大阪大学に研究設備を移設し,研究室のセットアップに手間取ったため,当該研究の開始が遅れた.このため,今年度はこれらの試運転を行うにとどまった.試運転の結果は良好で,今後の研究は支障なく行えると思う.
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