全体として研究は順調に進展したと考えている。新たに得られた知見としては次のようなものがある。 i) 葉緑体とミトコンドリアの分裂を80%以上と予想を越えて高度に同調化することに成功した。この系を使って葉緑体とミトコンドリアの分裂装置の形成過程を見直した。その結果、葉緑体の分裂装置は、これまで二重のリング構造と考えられていたのが、実は、内外のリング構造の他に、内外包膜の中間にもう一つのリング構造があり、結果として葉緑体の分裂装置は三重のリング構造であることが明らかとなった。一方ミトコンドリアは二重の膜構造であったが内側のリング構造ははっきりしなかった。 ii)葉緑体とミトコンドリアの分裂装置の形成過程を解析したところ、先ず葉緑体の内側の分裂リングが次に中間と外側の分裂リングが形成され、最後にミトコンドリアの内外の分裂リングが形成されることが明らかとなった。 iii)マイクロボデイは初期の葉緑体の分裂装置の形成には関与していないが、収縮に関与しているように思われた。この際にマイクロボデイも分裂した。亜鈴形となったマイクロボデイの両端に中心体様の構造が出現し、マイクロボデイの両端への分配に関与しているように思われた。 iv)葉緑体とミトコンドリアの内外の分裂装置の挙動を調べた結果、外側のリングは初期に現れた構造が最後まで収縮し、葉緑体を分裂させた。一方内側の分裂装置は収縮するに従って、構成成分が少なくなり、収縮と並行して減少していた。 v)様々の緩衝液、方法を駆使して、ついに分裂中の葉緑体のみを分離することに成功した。これには葉緑体の分裂装置が無償のまま残っていた。
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