本研究では、タバコ(Nicotiana glauca x N. langsdorggii)の遺伝的腫瘍で腫瘍特異的に発現するNgrol遺伝子や腫瘍特異的なcDNAクローンについて、1)腫瘍誘導のごく初期における発現解析、2)それらの遺伝子の生理機能の検索、3)傷による腫瘍形成時に見られるオーキシン量の一過的増加の機構の3点を中心に解析を進めることを計画している。平成10年度には下記のような知見が得られた。 1) 腫瘍誘導ごく初期における発現解析 Ngrol遺伝子の発現に対するオーキシン、サイトカイニンなど各種植物ホルモンやストレス誘導物質の影響をNgrolBやNgrolCのプロモーター領域とGUS遺伝子の融合遺伝子をタバコF1植物に導入した遺伝子導入細胞を用いて調べた。その結果、NgrolB遺伝子がオーキシンによって発現が促進され、サイトカイニンでは影響を受けないのに対して、NgrolC遺伝子はサイトカイニンによって顕著に発現が促進され、オーキシンによっては影響を受けないことを見いだした。また、組織化学的観察から、サイトカイニンによるNgrolCの発現の促進は、新たな組織に発現を誘導するのではなく、すでに発現している組織での発現を強めているものと考えられた。ストレス関連物質の影響は植物ホルモンによるものより概して弱かったがさらに初期の発現の検討が必要である。 2) 遺伝的腫瘍特異的な遺伝子の生理機能の検索 既にN. tabacumにおいて、N.glaucaの持つNgrolCとNgORF13が生理機能を有することを示したが、腫瘍形成機能の有無については不明である。その点を検証するために、先ず、難しいとされたいたN.langsdorffiiの形質転換系を確立した。目下、その系を用いて得られたNgrol遺伝子導入植物について解析中である。
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