研究概要 |
本研究では、タバコ(Nicotiana glauca x N.langsdorffii)の遺伝的腫瘍で腫瘍特異的に発現するNgrol遺伝子や腫瘍特異的なcDNAクローンについて、1)腫瘍誘導のごく初期における発現解析と生理機能の検討 2)傷により誘導されるオーキシン量の一過的増加機構と1)との関係の解析の二点について解析を進めている。本年度は下記のような結果が得られた。 1)腫瘍誘導のごく初期における発現解析と生理機能の検討 Ngrol遺伝子群が、腫瘍形成におけるマイナスグループ(N.glauca)の腫瘍因子である可能性を検討した。昨年度、Agrobacterium rhizogenesのrol遺伝子を用いて確立した、N.langsdorffii形質転換系を用いて、Ngrol遺伝子群すべて(NgrolB,NgrolC,NgORF13,NgORF14)をN.langsdorffiiに導入した。35S-GUSを導入したクローンと無処理のN.langsdorffiiを培養したものを対照として、植物ホルモンに対する反応性を比較した結果、Ngrol遺伝子群形質転換細胞は植物ホルモン存在下では対照細胞と増殖に差がみられないが、植物ホルモンフリーの基本培地では、対照の細胞がほとんど増殖できないのに対し、発根しつつ増殖し、再分化して植物体を形成した。しかし、再分化した形質転換植物の葉切片を基本培地上で培養しても、腫瘍形成は認められなかったことから、Ngrol遺伝子群がマイナスグループの遺伝因子として関わっている可能性はあるが、唯一の腫瘍因子ではないと考えられる。
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