本研究では、タバコF1植物(Nicotiana glauca x N.langsdorffii)の遺伝的腫瘍で腫瘍特異的に発現するNgrol遺伝子や腫瘍特異的なcDNAクローンについて、1)腫瘍誘導のごく初期における発現解析と生理機能の検討 2)傷により誘導されるオーキシン量の一過的増加機構と1)との関係の解析の二点について解析を進めている。 本年度は1)について下記のような結果が得られた。 1)腫瘍誘導のごく初期における発現解析と生理機能の検討 NgORF13がRiORF13の毛状根誘導機能を促進するというわれわれの研究に基ずき、F1植物の遺伝的腫瘍形成時におけるNgORF13の発現を、GUSレポーター遺伝子を用いて詳細に解析した。その結果、 a)正常形態のF1植物でも発現しているが、腫瘍組織で強い発現がみられた。 b)老化の進んだ組織から自然に生じた腫瘍でも、切断処理によって生じた腫瘍も強い発現がみられた。腫瘍では、葉あるいは茎頂の原基様構造で発現している。 c)切断処理によって、NgrolBよりも早い時期に発現が誘導された。 d)正常形態の組織では、根よりも茎や葉などの地上部で強い発現がみられた。 e)茎頂や根端分裂組織、側根の先端でも発現していない。 f)以上の結果から、若い柔組織で発現すると結論した。
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