クロロフィルbは光化学系集光装置の周辺部分を構成する色素である。そのためクロロフィルa/クロロフィルb比は光合成系の集光装置の大きさを決定する重要な要因である。本研究の目的は、最近申請者が初めて単離に成功したクロロフィルb合成遺伝子CAO(ChlorophyII a oxygenase)のクロロフィルa/クロロフィルb比調節に対する役割を明らかにすることである。そこで本年度は次の点に焦点を当てて研究を行った。 (1) CAO(クロロフィルaオキシゲナーゼ)の酵素学的解析 一般にアミノ酸配列からだけでは、その反応機構を結論できないので、生化学的な実験かを行った。大腸菌で大量発現させたものを酵素標品として用い、Zn-chlorophyII Ide aまたはZn-7-hydroxychlorophyllideを基質にその酵素活性を測定した。その結果両者ともZn-chlorophyII bに転換された。この結果によって、CAOはクロロフィルaを7-ハイドロキシメチルクロロフィルを経て、クロロフィルbに転換することが明らかになった。 (2) 生理学的解析 光強度に対するクロロフィルa/クロロフィルb比の変化をアラビドプシスを用いて調べた。その結果、低照度下で育てるとクロロフィルbの蓄積が誘導され、クロロフィルa/クロロフィルb比が低下することが解った。ノーザンハイブリダイゼーションによってCAOのmRNAの量を測定すした結果、低照度でCAOの発現が誘導された。 (3) 形質転換体の作製 CAOの発現とクロロフィルa/クロロフィルb比の関連を調べるためには、CAOを大量発現したり、発現量を抑制した時のクロロフィルa/クロロフィルb比を調べることは有効な手段である。現在35SプロモーターにCAOのcDNAをつなぎ、アラビドプシスのクロロフィルb欠損株に導入し、CAO遺伝子の過剰発現株を作成している。
|