研究概要 |
(1)クロロフィルaオキシゲナーゼ(CAO)の酵素学的解析 大腸菌で多量に発現させたCAO蛋白質を用いた研究によって,CAOの反応機構がほぼ明らかになった。CAOは,クロロフィルaのメチル基(-CH_3)に酸素を添加しハイドロキシメチルクロロフィル(-CH_2OH)に転換したのち,さらに酸素を添加することによって,ジオール(-CH(OH)_2)を経てフォルミル基(-CHO)に転換させることが明らかになった。このように,CAOは2段階の酸素添加反応を触媒することによって,クロロフィルaを直接クロロフィルbに転換し,さらに,この反応には他の酵素を必要としないことが明らかになった。この結果は,クロロフィルb合成は,CAOの発現によって調節されている可能性を示唆している。 (3)CAOを大量発現させた形質転換植物の作製 シロイヌナズナのクロロフィルb欠損株にCAOを導入したところ,クロロフィルbの合成能が回復した。これによって,シロイヌナズナにおいても,CAOがクロロフィルbの合成に関与していることが証明された。そこで,CAOの発現とクロロフィルbの蓄積,集光装置の大きさの関連を調べるため,CAOを過剰発現させたシロイヌナズナの形質転換体の作製を試みた。35Sプロモーターを用いた発現ベクターによって,CAOをシロイヌナズナの野生型にアグロバクテリウムを用いて導入した。さらに形質転換されたシロイヌナズナのF3から,CAOがホモで導入された系統を単離した。この系統のCAOの発現を調べたところ,野生型に比べ,2〜3倍のCAOが発現してた。そこで,クロロフィルを測定したところ,この形質転換植物は,野生型に比べ,クロロフィルa/クロロフィルb比が約0.2低かった。
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