光呼吸系は、葉緑体内のCO2濃度が低下するとRubiscoのオキシゲナーゼ作用がおこり、その産物であるグリコール酸が代謝され、その結果細胞内でCO2を発生させる代謝機能である。特に強光を受ける柵状組織中の葉緑体内では光合成が盛んになりCO2が不足する一方で、CO2の拡散供給速度が高くないので、光呼吸が活発に起こる。このとき、光呼吸系の活性が低いとCO2を十分に供給できず、やがては光傷害を起こす。本研究は、このメカニズムをさらに詳細に研究することによって、作物の光合成を飛躍的に高めることをめざすことを研究目標としている。今年度の研究成果は次の通りである。 1)初年度に購入したWALZ社の光合成測定装置を用いて、光合成と光呼吸との関係を詳細に調べた。その結果、強光下で光呼吸が抑制される2%CO2条件下におくと、光呼吸を行うことのできる21%O2条件下と比較して、どの植物も光合成が徐々に低下することが判明した。その原因は、2%O2条件下では、光化学系の光傷害が進行するためであることも明らかとなった。 2)光合成量の高い植物(イネ、ヒマワリ、ナスなど)では、葉の表裏に気孔が発達しており、さらに細胞間隙も発達していること、のために、強光下でCO2の拡散供給速度が比較的高いこと、が判明した。
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