研究概要 |
一次共生によって成立した紅色植物(単細胞紅藻類)は葉緑体・ピレノイドと他の核やミトコンドリアなどのオルガネラとの位置関係の解析には構造が簡単であることだけでなく、鞭毛を持たないことから細胞に方向性が無く好適である。このような観点から、昨年導入した落射蛍光ノマルスキー顕微鏡を駆使し、細胞内共生後に共生体と宿主細胞が一つの細胞としてオルガネラを統合していくプロセスを想定して葉緑体と核の位置関係に注目して作業を進めた。その結果の一部を昨年6月香港で開催された第2回アジア太平洋藻類フォーラムで「Thegeneric delimitation of Rhodella(Porphyridiales,Rhodophyta) with empasis on ultrastructure and molecular phylogeny」を発表するとともに、開催委員会からproceedingとして掲載するとの要請を受け、Hydrobiologiaに投稿し、現在印刷中である。また、本研究の主題に大きくかかわる内容の「藻類の多様性を細胞内共生から考える」を、昨年10月、京都で開催された日本進化学会設立記念シンポジウムに招待され、講演を行った。さらに本年2月DaeJoenのChugnum National Universityで開催された韓国藻類学会主催のワークショップのシンポジウムに招待され、「Systematic relationship of unicellular red algae: from the phenetics to the phylogeny」を講演した。この講演の内容も韓国藻類学会誌「Algae」にミニレビュウとして掲載される予定である。加えて,「多様性の植物学,2植物の系統」岩槻・加藤編に「細胞内共生と系統分化」の1章を分担し、本研究のあらましを中心とした内容を執筆した。以上のように、本研究は作業仮説を証明していく段階にあるにもかかわらず,このように注目を浴びていることを考えると、期待に応えるため早急に成果を挙げなければならない。 次年度の研究に向けて、現在は蛍光顕微鏡観察の技術開発として,FITCあるいはDAPI染色の媒染効果を上げるための工夫を考慮しているところである。さらに単細胞紅藻類のうち、藻株の少ないCyanidian Algaeの採集にも力点をおいた。
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