研究概要 |
本研究は、我々がアメフラシ中枢神経系から消化管運動抑制ペプチドとして単離・同定した新規の多種同族体ペプチドAplysia inhibitory peptides(AIP)の生理機能を明らかにすることを目標として行っている。今年度の研究による新たな知見は以下の通りである。 1,アメフラシ中枢神経系から消化管運動抑制活性をもつペプチド数種を新たに単離し、アミノ酸配列分析、質量分析、合成ぺプチドとの比較等を通して構造決定した。これらのペプチドはAIP族と構造上関連があり、Mytilus Inhibitory Peptides(MIP)およびMIP関連5残基ペプチド(MIP-RP)に分けられた。これまでにAIP11種、MIP6種、MIP-RP1種を同定している。2,これらAIPファミリー、MIPファミリー、MIP-RPの各ペプチドを化学合成し、食道、砂嚢、素嚢等の消化管各部位に対する自動収縮抑制効果を検討した結果、ぺプチドファミリー間で消化管各部に対する効果が異なること、また、ある消化管部位に対して同一ファミリーに属すペプチド間で効果に差があることなどを見出した。3,AIPファミリーペプチドおよびMIPファミリーペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体を作製し、免疫組織化学的手法によりこれらペプチドの局在を解析した結果、中枢神経系では各神経節に免疫陽性細胞が観察されたが、抗AIP抗体と抗MIP抗体に対する陽性細胞はほとんど重複しなかった。また、消化管の各部位にもこれら抗体に対する陽性細胞と線維が存在した。4,実際にアメフラシ消化管組織から数種のAIPおよびMIPを単離した。 現在、これらペプチドのアミノ酸配列をもとに、中枢神経系由来のcDNAライブラリーからPCR法によりペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子をクローニングし、cDNAの塩基配列を解析しているところである。
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