研究概要 |
本年度は、これまでのまとめとして様々な分類群での調査をおこなった。ノコギリシダ属(Diplazium)(基本数x=41)では、二倍体間の種間比較を行なった。rbcLによる比較からは、二倍体種は様々な系統群に含まれていて、系統的にはばらばらであることが判明した。rDNA座による調査からは、系統的に異なるノコギリシダとアマミシダでは複数の座があることがわかり、遠縁な種間でも同じ現象が認められた。また種内倍数性を持つ種群の比較も行ない、種内倍数体間では倍数体のレベルに比例してrDNAの座数も増加していた。カナワラビ属(Arachniodes)は、二倍体(2n=82)を主とする分類群である。これらについてアロザイムによる種間分化を比較したところ、二倍体種は近縁であることがわかった。コバノカナワラビでrDNAの比較を行なったところ、これも複数座で反応が見られた。同様な研究をオシダ属(Dryopteris,x=41)メシダ属(Athyrium,x=40)コモチシダ属(Woodwardia,x=34)にも発展させた。これまでわかったゼンマイ属(Osumunda,x=22)についての結果と合わせると、検討した種では二倍体レベルで共通して複数の座があることが確認された。このことは、元から二倍体種は、もともと高次の染色体数を持っていた可能性が示唆された。現在切り出したrDNA座のシークエンスと、他の二倍体種の分析を進めている。また現在のところ結果は出ていないが、他のシングルコピー遺伝子についてSodとPgiの遺伝子のシークエンスと、これらをプローブとしてFISH法による遺伝子座数の比較について研究を進めている。
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