研究課題/領域番号 |
10440255
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 利貞 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011647)
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研究分担者 |
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419)
加納 隆至 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40045050)
杉山 幸丸 東海学園大学, 人文学部, 教授 (20025349)
五百部 裕 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20252413)
山極 寿一 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60166600)
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キーワード | チンパンジー / ボノボ / ゴリラ / 映像エソグラム / 行動比較 / 共通祖先の行動 / 毛づくろい行動 / 大型類人猿 |
研究概要 |
タンザニアのマハレに生息するチンパンジーのデジタル映像エソグラムを作成した。現地で撮影したビデオテープを元資料として使用した。VHS資料の場合は、ビデオキャプチャボード経由で動画と音声をデジタル化した後パソコンに取りこみ、ハードディスクに保存した。その後、動画解析用のソフトを使用し、取りこんだ場面を編集した。その上で、編集した場面に撮影場所、撮影日時、撮影者、個体名、行動の説明といった情報を加えデータベース管理ソフトを用いて整理した。アフリカ大型類人猿3種の毛づくろい行動については、頻度、よく起る性年齢クラス間、行動パターンなどを詳細に比較し、パン属の2種と比較して、ゴリラは毛づくろいに投入する時間がきわめて少なく、バウトも短い。毛づくろいを要求する動作を欠き、毛の梳き方も粗い。しかしシラミ卵を除去する行動は存在した。ボノボは1日約10%を毛づくろいに投入する点はチンパンジーと同様だが、行動パターンの変異は少ない。母子間の毛づくろいが最もていねいであるのはすべての種で共通していた。これは、毛づくろいの衛生機能が母子間で顕著に表れると解釈できる。ヤマゴリラとヒガシテイチゴリラのビデオ資料を分析し、父性行動、挨拶、交尾、示威、遊び、営巣に現れる行動要素を分類し、文脈によってその組み合わせや機能がどう変化するかを検討した。その結果、ゴリラはチンパンジーと共通する多くの行動要素をもっているが、チンパンジーとは異なる機能を持っていたり、異なる文脈に登場する。未成熟個体の遊びには示威の行動要素がよく発現する。これは、ゴリラのオスが思春期以降も、チンパンジーのオスたちのようなはっきりした優劣順位を認知して共存しないことに関係がある。また、ヤマゴリラが交尾や求愛の際に発する音声がヒガシテイチゴリラでは接触コールに用いられるなど、亜種間にも違いがある。ゴリラの樹上巣の捕食者防衛である。
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