研究概要 |
低温成長分子線エピタキシ(LT-MBE)法により、(LT-)GaAsやIII-V族磁性半導体およびそのナノ構造を形成し、反射高エネルギ電子線回折(RHEED)、原子間力(AFM)・磁気力(MFM)顕微鏡や磁気特性測定システム(SQUID)などを用いてそれらの成長過程及び構造、光・磁気・輸送特性について調べた。本研究で得られた主たる成果を以下に記す。 1.LT-MBEによるGaAs成長時にRHEEDの強度振動が低温で復活し、その大きさは基板温度とV/III比に依存することを見出した。また、過剰供給されたAs原子を自己表面活性剤としたモデルでシミュレーション計算を行った結果、実験結果を再現した。 2.数パーセントの濃度のMnを導入した(Ga,Mn)SbをMBEにより形成し、その物性と成長温度との関係を調べた。高温(560℃)成長の試料ではMnSbと思われる矩形のクラスターがAFM、MFMで観測され、室温で強磁性を示した。一方、LT-MBE(300℃)では、室温で強磁性を示すものの、20K以下で別の秩序相が現れることを確認した。これは低温で強磁性を示す(Ga,Mn)Sbが形成されていることを示している。 3.LT-MBEによりGaAs(211)B面上に形成した(In,Mn)Asナノ構造のAFM観察より、Mnがサイズを均一化するサーファクタント効果を有することを明らかにした。 4.すべて半導体から成る強磁性体(Ga,Mn)As/非磁性体(Al,Ga)As/強磁性体(Ga,Mn)As3層構造を作製し、層間の結合を磁化曲線から調べることより、非磁性層の厚さ・障壁高さでそれらの磁気的結合を制御できるこを示し、スピン依存散乱による巨大磁気抵抗効果をこの系で初めて確認した。
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