SiとInSbの間にはおよそ19%と言う大きな格子定数差があり、その間のヘテロエピタキシャル成長は極めて困難である。本研究は、Si(001)及び(111)面上に1原子層(ML)程度のInを吸着させたときの表面再構成構造がInSbのヘテロエピタキシャル成長に与える影響を研究した。また、Si基板上のIn誘起超構造(再構成構造)上にSbを吸着させたときの表面再構成の変化を吸着量と温度の関数として研究した。 (1)In誘起表面再構成構造とInSbのヘテロエピタキシャル成長 Si(001)基板上でのInSb薄膜の成長の場合、Si(001)-In(4x3)上ではエピタキシャル成長が大きく促進された。このエピタキシャル性の向上はIn-(4x3)構造が存在するためであり、その構造がSbの吸着に対して安定なためである。Si(111)基板上では、Si(111)-In(4x1)上にInSbを成長させた場合、Si(111)-7x7上に直接成長させた場合より、エピタキシャル性は劣化した。この劣化は、(111)面上ではSi-In結合とSi-Sb結合が容易に置き換わるためである。Inと置き換わったSbは秩序構造を形成するが、この秩序構造がInの吸着率を下げ、ヘテロエピタキシャル成長を阻害することを明らかにした。 (2)Si(111)面上のIn、Sbの逐次吸着による表面再構成 Si(111)-7x7面上のIn誘起超構造上にさらにSbを吸着させたとき、Si、In、Sbの間の相互作用によって、様々な表面再構成が現れることを見出した。これには、Sbが吸着したときに生ずるSi-In結合とSi-Sb結合間の置換反応が大きな役割を演じていることを明らかにした。Si(111)-7x7上に直接Sbを吸着させたとき、本研究でのような低温では、Sbは秩序構造を形成しないことは注目すべきである。 このような結果は、2元素吸着を用いた新しい超構造や量子細線などの微細構造を形成することに応用できると考えられる。
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