本研究の目的は、 1)ペロブスカイトMn酸化物をバリアとする高温超伝導体接合を作成し、バリア厚さの均一性を達成することにより、異常に厚いバリアを通しても超伝導電流が流れるという"長距離近接効果"の真否を明らかにすること 2)高性能接合を作成すること、そのため最適なバリア材料を見い出すこと 3)ペロブスカイトMn酸化物の物性を解明すること、特に、応用上重要な電界効果の可能性を明らかにすること である。1)については、我々の用いているレーザアブレーション法に特有な粒子状突起の除去が第1の目標である。本研究では、エクリプス法により従来にくらべ粒子状突起の激減が達成できた。今後、さらなる改善とともに接合製作に適用予定である。バリアの平坦性が得られ易いランプ型接合については、本研究では、良い接合が形成できなかった。作成技術の改善が必要である。平坦膜を用いて、1、2)の目標を達成を今後目指す。 3)については、3種のペロブスカイトMn酸化物薄膜、Nd_<0.5>Ba_<0.5>MnO_<3-x>、Y_<0.5>Ba_<0.5>MnO_<3-x>、La_<1-z>Ba_YCa_<z-y>MnO_<3-x>について、良質の膜を作成でき、その物性を調べた。バリアとしての適性については調べ始めたばかりであり、今後、接合作成条件の検討により、高性能接合の作成を目指す。また、La_<1-z>Ca_zMnO_<3-x>(LCMO)へのBaの置換効果で極めて異常な現象を見い出した。すなわち、二重交換相互作用のシナリオには全く従わない現象のように見える。その解明と、これをバリアに用いた場合の接合特性の解明が今後の課題である。 また、電界効果については、単結晶において見い出されたと同様な巨大な電界効果を薄膜で観測したが、興味ある違いも見い出した。
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