研究概要 |
半導体微小ディスクレーザは,半導体と空気の境界面での全反射により強い光閉じこめ,高い共振器Q値を実現し,低しきい値電流注入にて発振を起こす.本研究代表者は本研究開始以前に1)世界最小レーザとなるディスク直径2μmの素子の実現,2)ディスクレーザでは世界初となる電流注入による室温連続動作,3)光通信波長帯レーザでは世界最低しきい値となる150μAでの発振,という3つの成果をあげていた.本研究ではさらに極限性能をねらうべく,まずこのレーザの詳しい理論解析を行った.このレーザはキャリア拡散によって光利得が発生し,周回モードで発振を起こすことが大きな特徴となっているが,これらを考慮した解析はこれまで行われていなかった.時間領域有限差分法とキャリア拡散を含むレート方程式を組み合わせた解析を行った結果,極限しきい値電流は約10μAであることがわかった.また実験では半導体加工精度の向上を図った.その結果,10℃以下の近室温ではあるが,連続動作しきい値50μAが得られた.また,このとき自然放出制御の割合を表す自然放出光係数は0.03と初めて測定された.この値は光励起で動作する素子に対して概算されてきた0.2という値に比べて低く,電流注入素子のキャリア拡散がこの効果を制限していることが示唆された.次にこの本研究では,このレーザからの光取り出し法を検討した.そしてレーザと類似の扇形ディスクを近接配置させれば,エバネセント結合により光がこのディスクに乗り移り,扇の端部から光を放射できることを思いついた.この効果を時間領域有限差分法で理論解析したところ,普通のレーザと同等の70%という高い効率にて光を取り出せることが判明した.さらにこれを実現するためのレーザと扇形ディスクの間の間隔0.3μmが可能なことを実験で確認した.次年度はこの光取り出し技術の確立を目指す.
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