研究概要 |
1.光子計数イメージングシステムによる位相回復法の確立 光子計数イメージングシステム(平成10年度設備備品)を用いて光波のフラウンホーファー回折像を1,000,000程度の広いダイナミックレンジで撮像し、このデータから位相物体の周期状位相分布を再生することは、昨年度に成功していたが、再生像にはなお若干のノイズが残っていた。今年度は、この問題の検討を行い、NDフィルターで全体の強度を減少させて撮像した回折像と、ゼロ次回折成分をマスクで遮って撮像した回折像を合成する際の二つの画像の位置合わせ誤差と、回折像の飽和による像の歪みが主な原因であることを確認した。撮像条件の適正化と位置あわせの改善によって、回折像の強度分布をより正確に測定することができた。その結果、この回折像データから位相回復を行うアルゴリズムの収束性が向上し、位相差λ/30の物体の矩形の位相分布形状を、従来よりも正確に回復することに成功した。 2.光子計数データ取り込みの完全オンライン化 実験室で撮像した回折像データは、研究室内LANのデータ転送を利用してワークステーションに取り込んでいたが、今年度は、さらにデータ収集・解析の効率を向上させるため、ワークステーション側からの制御による完全オンラインでのデータ取込を可能にした。 3.薄膜試料・生物試料への応用の検討 SiO_2透明薄膜を基板上に形成した位相差λ/30のモデル位相物体を引き続き試料として用いているが、他の誘電体薄膜試料や生物組織試料などへの適用について検討を行った。引き続き、その適用限界と問題点を調べ、無染色の生物試料を用いた実験に向けて検討を行う。 4.離散光子計数データへの適用 光子数が少ない回折像を対象に、離散的な光子計数データを推定回折像に変換する最適な方法として最尤推定法の利用を検討した。
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