研究概要 |
光子計数イメージングによる位相回復法をより確実な技術とし、実際に生物試料等に応用するための基礎的検討を行い、以下の成果を得た。 1.光子計数イメージングシステムによる位相回復法の確立 SiO2透明薄膜を基板上に形成したモデル位相物体を使用してシステムの改善を図った。とくに弱位相物体の位相回復を行う際に問題となる、回折像の中心部データと周辺部データの合成法の改善を図った。回折像に含まれる高強度の低次回折スポットから低強度の高次回折スポットまで広い範囲にわたって取り込むために、光子計数イメージングカメラの視野を横ずらししながら、隣接する回折スポットのグループごとに撮像していき、最後にそれらを合成することにより、弱位相物体の回折像を広いダイナミックレンジで高次スポットまで取り込むことを試みた。その結果、これまでは3次までであった回折像の取り込み次数を7次まで拡大し、実効的なダイナミックレンジを11,000,000:1に高めることができた。画素サイズが大きいため、位相回復に利用するには至っていないが、引き続き計算環境を整備して実行する予定である。 2.微弱位相物体の位相回復の解析的手法 微弱位相の条件のもとで回折像が満たすべき数学的関係を利用して、解析的に物体位相を求める手法について考察した。この手法で求めた解を位相回復の初期推定に利用することでアルゴリズムの収束性を大幅に改善することが期待できる。 3.離散光子計数データへの適用 回折像を形成する光子数が少ない場合に、得られた離散的な光子計数データに対して最尤推定法を適用した。今後生体材料等に応用する場合には、このような光子数の制限された状況が多いものと想定される。これまでに検討した最尤推定法との比較を行いながら、引き続き有効なアルゴリズムを探る。
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