研究概要 |
1.光子計数イメージングカメラ(平成10年度申請設備備品)を用いることによって、非常に広いダイナッミックでフラウンホーファー回折像データを取得することに成功した。SiO_2透明薄膜を基板上に形成した極微弱位相格子の高次回折像部分を撮像し、これとNDフィルターで強度を減少させて別に撮像したゼロ次光部分を合成する方法で80,000以上のダイナミックレンジが、また、上記カメラの視野を横ずらししながら、隣接する回折スポットのグループごとに撮像していき、最後にそれらを合成する方法では、実効的なダイナミックレンジを11,000,000:1にまで高めることができた。現在のところナノメートルオーダーの位相感度が達成されたと推定されるが、今後、上記のダイナミックレンジをすべて有効に利用することによって、サブナノメートルのオーダーで物体の凹凸を正確に回復することが期待できる。 2.冷却CCDによる従来の撮像法では1次回折光までを位相回復に利用していたため、回復できるのは物体周期構造の基本周期成分の情報にとどまっていたが、光子計数イメージングカメラのよって回折像の取り込み次数を7次まで拡大することができた。 3.このうち3次回折光までを使って実際に位相回復することに成功した。7次光までのすべてを利用することによって、物体構造をさらに正確に回復されるものと期待できる。 4.微弱位相の条件のもとで回折像が満たすべき数学的関係を利用して、解析的に物体位相を求める手法について考察した。この解を位相回復の初期推定に利用することでアルゴリズムの収束性の大幅な改善が期待できる。 5.回折像を形成する光子数が少ない場合に、得られた離散的な光子計数データに対して最尤推定法を適用した。今後生体材料等に応用する場合には、このような光子数の制限された状況が多いものと想定される。これまでに検討した最尤推定法との比較を行いながら、引き続き有効なアルゴリズムを探る。
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