研究概要 |
動的破壊における破壊速度(V)の持つ力学的な意義について、特に加速域と減速域に分けて動的破壊靭性(K)、破面粗さ(R)などの諸パラメータとVとの関連についての実験的な研究を行った。K、Vの精密な計測には自作の2像面高速度撮影カメラ(RIAM-DFC2形)を、またRの計測には非接触のレーイクスザ光粗さ計を用いた。主要な結論は次の通りである。 (1)供試材として片側ノッチ付き押出成形低分子量PMMA(重量平均分子量10^4オーダ)引張試片(SEN)を用いた場合、90℃、24時間のアニールはV,K,Rを増加させることが分かった。しかしCT+SEN形の試験片ではその影響は認められず、その点で試験片形状依存性が認められた。 (2)エポキシ樹脂、低分子PMMAのCT+SEN形の試験片を用いた実験から、VとKのピーク値に時間差が発生すること(Vが先行)、この時間差はき裂から荷重作用点まで距離が増加すると大きくなり、除荷速度のピーク値はVとKのピークのほぼ中間に存在する。 (3)中途に円孔を有する低分子PMMA材の動的破壊実験で、K、Vは増加、減少、再増加を生じる。この場合にもKはVの一意的な関係には無く、関係は加速度(A)に依存することを明らかにした。 (4)き裂の加速、再加速時においてKとVが同一の場合、Aがほぼ同じ値になることを明らかにした。このことはKとVの関係はAを入れてほぼイクスプリシットに表現できることを示唆している。 (5)低分子PMMAの動的破壊では外力仕事の半分近くが破壊エネルギーに転化することを明らかにした。
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