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1998 年度 実績報告書

電子蓄積リングの自由電子レーザーへの最適化

研究課題

研究課題/領域番号 10450039
研究種目

基盤研究(B)

研究機関岡崎国立共同研究機構

研究代表者

浜 宏幸  岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (70198795)

研究分担者 高野 史郎  高輝度光科学センター, 放射光研究所, 副主幹研究員 (70212008)
田中 均  高輝度光科学センター, 放射光研究所, 主幹研究員
保坂 将人  岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (60290897)
キーワード自由電子レーザー / 電子蓄積リング / 縦方向位相空間 / 運動量収縮因子 / 非線形性 / 自己透起電場 / リングインピーダンス
研究概要

本研究は蓄積リングに組み込んだ自由電子レーザー(FEL)の高度化に求められる、さまざまな因子の最適化を図るとともに、より特徴的な次世代光源を探究することを目的として行われている。本年度は幾つかある蓄積リングのビーム性質のなかでも、縦方向の電子の位相空間分布に着目して、理論的・実験的にFELとビーム性質の関わりを研究してきた。蓄積リング中において電子群は放射光による量子励起と緩和の釣合うある一定のエネルギー幅を持ち、またRF加速電場と運動量収縮因子(momentum compaction factor)と呼ばれる円形加速器の縦方向色収差によってシンクロトロン振動を生じ、エネルギー広がりはまた実空間広がりに反映ざれる。またこの電子の分布関数は単一のRF加速電場の他に電子ビーム自身が周囲とに電磁的相互作用を起こし、非線形性の強いポテンシャル下で振動し、複雑な分布関数として観測される。
電子密度を大きくするために、運動量収縮因子を小さくして相対的に大きいエネルギー差を持つ電子も実空間で広がりが大きくならないように蓄積リングの光学因子を探ることは究めて興味深い。しかしながら加速器の電磁場はエネルギーのずれと周回距離の関係を単純な線形性に留めず、高次の非線形をもたらす。これまで、この高次の運動量収縮因子を理論的に導出することについては殆ど研究されていなかった。我々は円形加速器中のビーム軌道の周期解を繰り返し計算することで高い次数のそれを導き出すフォーマリズムを確立した。また実験的に蓄積リングの多数箇所のエネルギー分散関数の非線形性を測定しこれと比較した。超大型のSPring-8蓄積リングと小型リングであるUVSORの2つのまったく異なった蓄積リングで、計算値と実験値は良く一致することを見い出した。これによって高次の運動量収縮因子を打ち消すような加速器の光学パラメータを理論的に求める方策を得たと言える。
実際の電子群の位相空間での分布関数は電子ビーム自身の誘起電場によって単純な関数形にならない。ビーム自身の誘起電場は、ビームが通過する真空パイプのインピーダンスによって支配されるが、このインピーダンスを抵抗とインダクタンスに分離して分布関数を数値的に求めた。非常に単純なモデルであるが、ある電子数の制限下でUVSORで測定された電子の空間分布を非常に良く再現することが分かった。さらに運動量収縮因子の符号を通常の正から負に変えた場合、まったく異なった分布関数になることも実験的に示され、またこれは同等のモデルを用いた数値シミュレーション結果と良く一致した。運動量収縮因子の符号が正の場合、電子数が増えるに従い電子の空間分布が単調に広がり、すなわち電子のピーク密度は電子数に比例しない。これに反し運動量収縮因子の符号が負の場合、ある一定の電子数まで空間分布は狭まってゆき、これを超えるとエネルギー広がりが増大し始め、結果的に空間分布も広がり始める。これは実験的にUVSORのFEL用アシジュレータからの放射を観測して確かめられた。この結果を踏まえてFEL相互作用を運動量収縮因子の符号をパラメータとしてシミュレーション計算を行ってみた。これによると負の運動量収縮因子の場合、FELパルスの最初の成長では正の場合にくらべはるかに大きな強度に成長することが分かった。またエネルギー広がりが増大したような大電子数の場合でもFELの成長は正の場合と殆ど変わらず、平衡状態に至った時のFEL出力は殆ど同じレベルになることが示唆された。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (3件)

  • [文献書誌] H.Tanaka et.al.: "A Perturbative Formulation of Nonlinear Dispersion for Particle Motion in Circular Accelerators" Nucl.Instr.and Meth.in Phys.Res.A. (印刷中).

  • [文献書誌] H.Hama and M.Hosaka: "Lingitudinal Beam Dynamics and FEL Interaction on a Negative Momentum Compaction Storage Ring" Nucl.Instr.and Meth.in Phys.Res.A. (印刷中).

  • [文献書誌] M.Hosaka et.al.: "Influence of Electron Beam Properties on Spontaneous Radiation from an Optical Klystron" Nucl.Instr.and Meth.in Phys.Res.A. (印刷中).

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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