研究概要 |
1. 4次元凸包の理論的に最も高速な構成法である逐次添加法を,有限精度の計算環境で安定して動作するソフトウェアとして実装するために二つの方針を平行して検討した.その第一は位相優先法(位相構造の一貫性を優先させることによって矛盾の発生を防ぐ方法)に基づく実装法で,第二は整数帰着法(すべての判定を整数計算に帰着させて誤差の発生を防ぐ方法)に基づく実装法である.両者の性能を比較した結果,最終的性能では位相優先法の方がすぐれていると予測されるが,実装の容易さまで考慮に入れた場合はまず整数帰着法でソフトウェアを試作すべきであるという結論に達した.そしてその方針でプログラミングを開始した. 2. 整数帰着法に必要な多倍長計算の高速化を図った.この計算に必要なのは計算結果の値そのものではなくて,その符号であるという点に着目し,剰余計算を利用して単精度計算に帰着させることによって計算時間を短縮する方針を採用し,その有効性を確かめることができた. 3. 4次元凸包を3次元空間へ射影することによって四面体格子構造を構成し,それを有限要素法・境界要素法の格子として利用する際の問題点を検討した.この方法で各種の偏微分方程式を解き,その性能を調べることができる.それによって,3次元空間で望ましい格子を得るためには,4次元空間でどのように点を配置して凸包問題を解けばよいかに関する指針を与えるアルゴリズムを構成した.
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