研究概要 |
1.昨年度に,4次元凸包の理論的に最も高速な構成法である逐次添加法を,有限精度の計算環境で安定して動作するソフトウェアとして実装するために二つの方針を平行して検討したが,本年度は,その評価結果に基づいて,整数帰着法によるアルゴリズムを実装した.これは,4次元凸包の位相構造の決定のためのすべての判定計算を整数計算に帰着させて誤差と矛盾の発生を防ぐアルゴリズム設計法である.この方法では,入力データに例外的な配置が生じている場合にはそのことも厳密に認識できるため,例外処理が必要となる.この例外処理を回避するために,実装では記号摂動法も組み込んだ.これによって比較的短いプログラムでありながら,どのような入力に対しても安定して動作するシステムができ上がり,計算実験によってもこれを確かめることができた.次年度は,このソフトウェアの高速化をはかる予定である. 2.4次元凸包を3次元空間へ射影することによって四面体格子構造を構成し,それを有限要素法・境界要素法の格子として利用する実験を行ない,3次元空間で望ましい格子を得るためには,4次元空間でどのように点を配置して凸包問題を解けばよいかに関して検討した.特に,(i)一定密度のランダムな点配置,(ii)3次元整数格子点に規則的に置いた点を4次元へもち上げた配置,(iii)代表的結晶構造を真似た配置について得られた四面体メッシュの質を評価した.その結果,結晶構造に基づくものが一般的によいメッシュとなるが,境界形状が複雑な場合には,境界付近でさらに改良が必要であることなどが明らかになった.
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