研究概要 |
本研究は閉じた微小き裂の寸法を正確に非破壊評価し,重ねて閉じ具合の非破壊評価をも可能とする高感度超音波探傷手法の原理の構築を目指したものである。本年度は以下の実績を得た。 1. 微小入射角による斜角探傷の閉じたき裂に対する高感度発現機構の解明 はじめに超音波による閉じたき裂の探傷の把握に不可欠な,超音波のき裂に対する挙動等,種々の基本的特性について整理を行った。次に再現性良くデータを収集するための超音波自動探傷手法ならびに検証に不可欠な閉じた微小疲労き裂の作製と観察方法について詳細な検討を行った。 以上を踏まえ,被検査物底面に存在する垂直な微小き裂において,微小な入射角(2゚程度)を導入した斜角探傷によれば,底面からの反射波の強度を高揚するき裂肩部の影響と,き裂先端での超音波の減衰が同程度に出現することを見い出した。さらに両者の差により,垂直探傷ならびに大きな入射角による従来の斜角探傷に比べき裂検出の感度が著しく向上することを明らかにした。 2. 閉口き裂に対する微小入射角を用いた斜入射超音波応答の理論モデルの構築 上記を踏まえ,深さ1mm程度の微小な閉じた疲労き裂を対象として,逆問題解析によりその寸法とき裂閉口圧の両者を評価する手法を開発し,検証した。さらに種々の厚さ,異なる材質の被検査物に同成果を展開した。ここに微小入射角を用いた斜角探傷による感度向上は,垂直探傷の場合とは異なり,薄板を対象としたときにより顕著になることを明らかにした。また種々の厚さの被検査物に存在する0.5〜5.0mmなる範囲の深さを有する閉じた疲労き裂を対象とし,その寸法ならびにき裂閉口圧の評価を実証した。
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